鶴岡市中央公民館で開催された『第12回寒梅忌』に行ってきました。
「寒梅忌」は作家の故藤沢周平氏をしのぶ会として、「鶴岡藤沢周平文学愛好会」(萬年慶一代表)の主催で毎年この時期に開催されているものです。
会場には地元はもちろん、全国各地から藤沢周平ファンが大勢集まり、全員で藤沢さんに黙祷を捧げて追悼式を行いました。
その後、「第一部」として、地元の「三瀬(さんぜ)」を舞台とした藤沢さんの短編「三年目」を松田静子さん(愛好会顧問)が解説し、地元の「表現舎刻一刻」の方々が朗読劇を演じました。
私の高校の恩師であり遠縁でもある松田さんが、作品の舞台である各地のスライドを交えながら作品の背景を解説してくださったおかげで、ありありと光景を思い浮かべながら朗読劇を鑑賞できました。
第二部では、作家のあさのあつこさんをお迎えして、「藤沢作品に魅せられて」と題する公演が行われました。
「バッテリー」をはじめ、数々のヒット作品で人気作家の座を確立されているあさのさんですが、結婚後、家事や育児に忙殺される中で、十代からの夢であった執筆活動をあきらめかけていたそうです。
そんなとき、偶然に出会った藤沢作品(「橋物語」)をきっかけに、「諦めたくない!」「言い訳したくない!!」「書きたい!!!」という感情が掻き立てられ、その後の執筆活動へとつながったのだそうです。いわば、あさのさんの「もの書き」としての原点が藤沢作品だったわけです。
そんな縁深い藤沢周平の故郷である鶴岡を訪れるのは今回が三度目だそうですが、藤沢さんゆかりの場所を訪れて涙があふれ出てくることが何度かあったそうです。そして鶴岡のどこにいても藤沢さんがいると感じられる、とも話されました。
あさのさんは、藤沢さんが鶴岡を愛したように鶴岡の街も人間も藤沢さんを愛していることがよく分かる、そんな鶴岡は「(書き手としてよりも)読み手、ひとりの人間としての自分にとってのもうひとつの場所」と表現してくれました。
今日はあさのさんをはじめ萬年さん、松田さんなど、様々な方々のお話に触れ、藤沢作品への愛着がグッと深まりました。
今夜はあさのさんのお話に出てきた「梅薫る」(中公文庫「夜の橋」所収)でも読んでみようかと思います。
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