昨日の多聞館では、お昼に大勢のお客様を二組お迎えすることになり、朝から大忙しでした。
一組は、町内のSさんのお宅の『七つ祝い』の祝宴です。
商売上もお世話になっているSさんのお宅の長男さんが数え年で七歳、次男さんが五歳になったということで、出羽三山神社でのご祈祷の後、祝宴でご利用いただきました。
赤いお膳に金屏風を用意してお迎えしました。
もう一組は、出羽三山参拝でお越しの団体様の精進料理の昼食です。
こちらのお客様はもう何十年にもわたってご宿泊やご昼食で多聞館をご利用いただいております。
同じく「精進料理」と言っても、毎年お越しになるお客様ですので、食材や調理をいろいろと変えながらおもてなししています。
多聞館はご宿泊はもちろん、それ以外にも冠婚葬祭の宴席や団体様での昼食などで、地域の皆様をはじめ多くの方々にご利用いただいております。
ご予算、献立等、お客様のご希望には出来る限り添うようにしておりますので、ご利用をお考えの方はぜひご相談ください。
春先の不安定な気候のためか、生育が遅れていた地物の孟宗竹がようやく出始めました。
庄内では「孟宗竹」とはいわず単に「孟宗」といい、「田川孟宗」や「谷定孟宗」が高級ブランドとして知られていますが、そのほかにも知る人ぞ知る、というプチ・ブランドの孟宗も数々あります。
昨日はその一つ「高寺孟宗」を頂きました。
農家の小林さんが丁寧に掘りあげた初物を、竹林からまっすぐ多聞館に運んできてくれました。
土だらけで切り口がまだ濡れているほど新鮮な孟宗です。
孟宗は鮮度が命。
時間が経てば経つほどエグミが強くなり味が落ちます。
ですから届けられた孟宗はすぐに皮を剥き、適当に切って大釜で茹で上げます。
その後は、料理に応じて使い分けられることになります。
昨日は初物の高寺孟宗をシンプルにワサビ醤油で頂きました。
孟宗特有の香気がいっぱいで、お酒も進みました。
これから続々と地物孟宗が届くことでしょう。
お客様もどうぞご期待ください。
ここ羽黒も例外ではなく 、日中の気温は26度ほどにまで上がっていました。
そのおかげで、遅れていた春の山菜も一気に成長したようです。
上の写真は栽培の月山筍。
協力農家の高橋さんが初物を届けてくれました。
まだ雪の多く残る山から採ってきたものです。
天ぷらやお浸しの定番です。
他にも連休中から、たらの芽、ウルイ、コシアブラ、アザミ、ウドなどが次々に旬を迎えています。
春の膳は山の香りがいっぱいです。
筍の美味しい季節です。
テレビや雑誌でも連日、各地の「名物筍」が紹介されています。
ここ庄内にも「湯田川孟宗」や「谷定孟宗」をはじめ、美味しい孟宗筍がありますが、まだ旬には早いようです。
でも、筍好きの庄内人は地物を待ちきれずに、九州や静岡、金沢など各地の筍を食しているようです。
孟宗竹(庄内では単に孟宗とよびます)の料理はいろいろありますが、ここ庄内でもっともポピュラーなのが味噌仕立ての『孟宗汁』です。
水煮した孟宗と厚揚げ、椎茸を味噌煮にするのですが、酒粕を入れるのが特徴です。
同じ山形県でも、内陸地方ではこういう食べ方はあまりしないそうなので、庄内地方独特の食文化といえるでしょう。
最近では若い世代で、豚肉も一緒に煮込むことも多くなっているようです。
多聞館でも今日は喜寿のお祝いでお越しの皆さんの昼食に孟宗汁をお出ししました。
長年地元を離れて暮らしていらっしゃる方々も多くいらっしゃり、懐かしい味覚を喜んでくださいました。
この『庄内名物孟宗汁』は、地元の孟宗が終わる5月末頃までご賞味いただけます。
今日は地元の氏神様である『烏崎稲荷神社』 の例大祭『春祭り』です。
早朝から氏子総出で境内を掃除し、若者衆が幟を立てました。
神事は10時から。
瀧本宮司により執り行われました。
神事の後は多聞館に移動して『直会』です。
春祭りの献立は昔から決まっていて、にしんの焼き物、ニラと鱒のあんかけ、うどよごし、それに孟宗の味噌煮です。
どの料理にも春の香りがいっぱいです。
神事の準備や直会の運営は四件の『当屋』が共同で当たります。
過疎化が進んだ昨今では、5~6年に一度当屋が回ってくるようになっています。
夜には幟を下げるために若者衆が神社に集まり、ここでもまた酒が酌み交わされます。
近所に住んでいながら、なかなか顔をあわせる機会のない面々が集まって様々なことを語り合う、貴重な場です。
過疎化、高齢化が急速に進む中にあっても、由緒ある神社を 氏子皆で支えているところに、地域社会の結びつきの深さを感じます。
今日は冬至。
一年でもっとも昼の長さが短い日です。
「冬至にゆず湯にはいったり、かぼちゃを食べると風邪をひかないとい」とは、全国的に言われていることのようです。
ここ庄内では、冬至にあずきとかぼちゃを甘く煮た『冬至かぼちゃ』(一般的には『いとこ煮』というようです)を食べると風邪を引かないとか、中気(=中風)にならないと言われています。
科学的に見ても、かぼちゃに含まれるカロチンには免疫を高める作用があるし、かぼちゃ・あずき双方に多く含まれるカリウムは、体内の塩分を排出し高血圧を防ぐ作用があるそうですから、あながち迷信とも言い切れないようです。
冬はこれからが本番ですが、日の長さは確実に日一日と長くなっていきます。
『冬来たりなば春遠からじ・・・』ですね。
今日12月9日は『大黒様のお歳夜』です。
各家庭で大黒様に豆尽くしの膳などをお供えして、家族の健康や商売繁盛、子孫繁栄などを祈るもので、庄内地方特有の風習のようです。
お供えする「豆尽くしの膳」の メニューはだいたい一般化しており、ハタハタの田楽をメインに、豆なます、豆腐の田楽、豆ご飯、そして納豆汁・・・といったところです。
近年では、地元のスーパーなどでも、お歳夜限定で、単品、或いはセットで大黒様メニューが売られているようです。
豆は、「まめに=健康に」過ごす、に結び付くのでしょう。
また、ハタハタは「鰰」と書くように(一説では雷神の古名とされ「霹靂神(はたたかみ)」に由来しているとか)、古くから神聖な魚とされてきたことや、「ぶりこ」と呼ばれる魚卵がたっぷりと入った様子が多産を連想させるのかもしれません。
料理と共に供えられる二股に割れている「まっか大根」も、安産や子孫繁栄を祈願する意味があるとも言われています。
さらに、お金を入れた枡も供えられます。こちらは商売繁盛や金運(家運)上昇の意味なのでしょう。
さすがは庶民に身近な大黒様。様々な祈りを引き受けてくれます。
米や豆のお菓子・お神酒をも供え、灯明をともして皆が拝んだ後は・・・
大黒様メニューでの夕食です。
今年一年の無病息災に感謝し、来年へと思いを馳せるひと時です。
本格的な冬の訪れを前に、この地域の畑では野菜の収穫が急がれています。
この時期に収穫された野菜の多くは長い冬に備えるための「越冬野菜」です。
その保存方法の代表が「漬物」です。
多聞館でも先月から連日のように野菜の漬け込み作業が続いています。
青菜、赤かぶ、大根、白菜・・・・・
新鮮な野菜を流水できれいに洗い、必要な下処理を施し、分量の塩などを加えて重石を載せます。
あとは時間がそれぞれの野菜のうまみを凝縮させ、昇華させてくれるのを待つだけです。
流通事情がよくなった昨今では、一年を通じて生の野菜が手に入るので、「越冬野菜」という言葉自体死語になりつつあるようです。
でも、生産者の顔が見える地元の野菜を、最高の旬に収穫し、うまさを凝縮させた漬物は『地域の食文化の結晶』といえると思います。
多聞館にお越しの客様にもそんな自家製の漬物を召し上がっていただいております。
どうぞ、ご期待ください。
今年もハタハタの美味しい季節が到来しました。
ハタハタは日本海の冬を代表する味覚。
ここ庄内地方では、焼いて甘味噌を塗った「田楽」や、塩湯でして醤油でいただく「湯上げ」が代表的ですが、他にも醤油や味噌に漬け込んだり、しょっつる鍋やハタハタ寿司にしたり・・・
雪国の冬の貴重な蛋白源として、多様な食文化が築かれてきました。
ハタハタの卵は「ぶりこ」とよばれ、プチプチした食感が好まれます。
身は上品な甘さをもつ白身で、淡白な味わいです。
こんな冬の味覚をいただくと、厳しい冬の訪れも満更ではないなあ、と感じます。
最近のコメント